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革の種類について①~鞣しの歴史とその種類~

 

革と一口に言っても動物や鞣し方によって無数の種類があり、使用目的や適合性によってその中から選別する必要があります。
「革の種類について①」の今回はでその歴史と鞣しの種類を簡単にご紹介していきます。

目次
①鞣しの歴史
②鞣しの種類

1.クロム鞣し
2.タンニン鞣し
3.比較
4.その他の鞣し方

③まとめ

 

①鞣しの歴史

革はもっとも古いサステナブル素材の一種で、その歴史は200万年前の旧石器時代にまでさかのぼるとされています。
そのころから、狩猟による食肉の副産物として靴や衣服に使用していました。ですが、動物から剥いだままでは腐敗するためそのままでは使えません。そこで、「皮」から「革」へ、生モノから材料へ変える工夫が始まります。

最初は乾かす、揉む、噛む等の物理的処理だけでしたが、後に理化学的処理の1つとしてまず開発されたのが魚や動物の油脂を塗る「油鞣し」だとされています。
その後、倒木のそばで死んだ獣の皮や染色のために草木の汁に漬けた皮が腐らないことから発見された「植物タンニン鞣し」など、様々ななめし技術が開発されてきました。
日本では古来より伝わる鞣し方法に、菜種油を用いて鞣す「白鞣し」や動物の脳しょうを使った「脳しょう鞣し」、燻製のように煙でいぶす「燻煙鞣し」などがあります。

以上のように歴史と共に様々な鞣し方が発明され現在も存在しますが、近年はこれから紹介するクロム鞣しが最も多く普及しており、次いでタンニン鞣し(ヌメ革)が主流になります。

②鞣しの種類

鞣しとは、生皮に理化学的処理を施して皮の蛋白質を変性させる行為です。
これにより組織中の水分を取り除きくことで吸湿、加温、乾燥した場合にも腐敗や硬化を起こしにくく、柔軟性、通気性、耐熱性等を持った物質になります。

1.クロム鞣し

現在製造されている革の大部分がクロム主鞣しと言い、主に塩基性硫酸クロム塩と呼ばれるクロムを含んだ化学薬品を使用して鞣す鉱物鞣しの一種です。
100年以上前にドイツで発見され、さらに第二次世界大戦の軍需にて広まりました。
この革の利点は高い耐熱性や柔軟性、染色性が挙げられ、多くの色に染めることが出来ます。
また、再鞣しといってタンニンや合成鞣し剤を併用することや加脂量を調整することで多くの品種が製造可能です。
時間と手間のかかるタンニン鞣しと違い、ドラムに原皮と鞣し剤を入れて一挙に鞣しを行うことが出来るため作業効率がとても良く、一般的に後述のタンニン鞣しより安価な傾向にあります。
革独特の経年による風合いの変化は大きく望めませんが、上記の性質から家具から服まで幅広い用途に対応しています。

メリット→短時間で製造可能、化学変化で地の色が白っぽくなるので発色が良い、柔らかい傾向
デメリット→大きな変化を望めない、革の本来の風合いを楽しみづらい

2.タンニン鞣し

通称「ヌメ」と呼ばれており、昨今SDGsが叫ばれる中で注目を浴びています。
紀元前から続いている鞣し方法の一つで、タンニンといういわゆる「渋」を多く含む植物(ミモザやチェスナット)を温水で抽出した植物タンニンエキスの使用と共に発展してきました。現在はドラムを使用した速鞣法も開発され、製造時間の短縮がなされています。
タンニンの繊維を収縮させる効果により、ヌメ革は可塑性に優れ堅牢度が高く、環境に対して負荷が比較的に少ないため現在でも広く使用されています。
また、経年変化など、革本来の風合いを楽しみたい方向けです。

メリット→極度の金属アレルギーの方でも使用できる、製造過程の環境負荷が少ない、革の風合いを楽しめる
デメリット→最初は硬い、水に弱い、鉄分と反応して変色する場合がある、クロム鞣しより高価な傾向がある

3.比較

下記表はクロム・タンニン鞣しのみを比較した表です。
材料選びの際にご参考下さい。

  熱縮温度 耐熱性 吸水性 柔軟性 充実性(※1) 可塑性(※2) 染色性
クロム 77~120℃      
タンニン 70~89℃      

※1 革の外観的品質を評価する項目。手で触って圧縮した場合のふくらみ、弾力性、ボリューム感のこと。
※2 物体に応力を与えたときに生じた変形が、それを取り除いても元に戻らない性質のこと。例:型押し

4.その他の鞣し方

・油鞣し
不飽和脂肪酸含有量の多い魚油などの動物油で皮を鞣す方法で、一般にはセーム革の鞣しのことをいいます。多くの場合脱毛と吟面層を除去し、過剰な水分を除いた後魚油(主にタラ油)を浸透させ、湿度と温度を調節しながら油の酸化と酸化生成物の皮との結合を促進させます。柔軟で耐洗濯性がありますが機械的強度が弱く熱収縮温度が低い性質を持ちます。

・白鞣し
姫路白鞣し革、姫路革といい、印伝革と共に古い歴史を持つ日本独特の革です。この鞣し法が江戸時代の中頃、出雲国の古志村から伝えられたと言われています。牛皮を用い、川漬け脱毛、塩入れ、ナタネ油による油入れなどの工程を経て、天日乾燥と足もみ、手もみを繰り返して仕上げる方法です。淡黄色を帯びた白い革で、武道用具、財布、バッグ類、文庫箱などに加工されて姫路の特産品となっていますが、最近では川漬け脱毛法の採用が困難なため石灰脱毛法なども行われています。

・脳しょう鞣し
鹿皮の上毛と吟面層を除去し、一年ほど熟成させた動物の脳しょうを塗布あるいは湯に溶かした液へ漬け込み、さらに揉みと乾燥を繰り返す方法で昭和40年代の中頃までこの鞣しが行われていました。10世紀前半の『延喜式』にともに概要が記されており、歴史的に古い鞣し法です。脳しょう鞣し革の持つ柔軟性は、脳しょう成分であるリン脂質や鹿革線維の特性とへら掛けによって生じる線維束が解かれた状態が作り出すものです。一般には脳しょう鞣し革を白革と言います。

・燻煙鞣し
上記の白革を松葉あるいは稲わらをいぶした煙をあて、鞣し効果により保存性や水に対する安定性を高め、外観に燻煙色の着色するために行います。
通常、甲州印伝の製品加工の前に行われ、煙材料により色調が異なります。
煙中には、鞣し効果をもったアルデヒド類、カテコール化合物やフェノール化合物のようなポリフェノール化合物がガス状や粒子状で存在し、これらが皮タンパク質と結合することによって着色し、鞣されると考えられます。

・アルデヒド鞣し
アルデヒド化合物、特にホルムアルデヒド鞣しは古くから実用化されていました。アルデヒド基が主として皮タンパク質のアミノ基に作用して、化学反応によってタンパク質を固定し、安定化します。鞣剤として、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、などがあり、ソフトで耐アルカリ性の良好な鞣し効果が得られますが耐熱性はクロム革より低くなります。

・ジルコニウム鞣し
1940年頃に開発された比較的新しい鞣し法で、4価のジルコニウムの塩基性塩を使用します。革の色調は白色で充填性が高く、酸性に強いです。価格が高いので使用に限界がありますが、強い吟面を与えるのでクロム革の再鞣さいじゅうに使用されることがあります。熱縮温度は96℃前後です。

出典リンク:皮革用語辞典(一般社団法人 日本皮革産業連合会)

③まとめ

今回は歴史と大まかな種類についてまとめました。
皮革という身近にありながら歴史のある素材は中々ないと思います。

また、トピックとしてクロム鞣しとタンニン鞣しを比較しましたが、どちらがよい良いかという話ではありません。
製造過程での環境への配慮を気にするのか、発色や肌触りなど服飾品としての価値を重視するのか、耐久性優先なのかは用途によって様々です。
個人的に一番大事なことは、皮革製品を選ぶ際にそのどれを重視するかだと思います。

皆さんも皮革製品を購入する際は「この革は何の種類かな?」と少し興味を持って頂くと楽しいかもしれません。

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